予防接種
4種混合(DPT-IPV)
百日咳、破傷風、ジフテリア、ポリオを予防するワクチンです。
■百日咳
百日咳菌という細菌が毒素を産生し、長期間強い連続する咳が出てきます。大人は咳が長期間続きますが、苦しくなることはありません。お母さんからもらう百日咳に対する抗体は少なく、月齢が6か月以下、特に3か月以下の赤ちゃんでは感染すると重症化し、呼吸を止めたりすることがあります。呼吸を止める場合は人工呼吸器を使用する集中管理が必要になります。2か月から予防接種が可能ですので、早めに接種を開始することが大事です。また伝染力の強い細菌ですので、抗体価が落ちてくるとされる4歳以上のお兄ちゃん、お姉ちゃんがいる場合はお兄ちゃん、お姉ちゃんにも追加接種をしてもらった方が良いと考えます。
【就学前の三種混合ワクチン接種について】
百日咳の抗体は小学校入学前に低下してくることが知られています。百日咳の感染を予防するためにはMRワクチンの2期に合わせて三種混合ワクチンを接種することが推奨されています。特に乳児と同居している場合は、家族内感染が危惧されますので、4歳以降での接種が推奨されています。
■破傷風
破傷風菌が傷口から入って、感染を成立させ、毒素を産生します。毒素は体を動かしにくくさせ、患者さんは口が開けられなくなり、その後けいれんなどが起こします。呼吸ができなくなることもあり、亡くなってしまう場合もあります。ヒトからヒトへ伝染する病気ではありませんが、小さな傷口からも破傷風菌が体に侵入してしまうことがあるので、予防接種を早めに行う必要があります。
■ジフテリア
4種混合ワクチン(DPT-IPV)、2種混合ワクチン(DT)のDのジフテリア菌(Diphtheriae)です。ジフテリアは毒素を産生するジフテリア菌が主にノドなどの上気道をおかす感染症です。毒素により、喉や鼻に偽膜という膜ができ、気道が閉塞し、5~10%の患者さんが亡くなります。また神経炎による麻痺や心臓の筋肉が障害されることがあります。日本では1945年に8万6000名(致死率10%)もの患者さんの報告がありましたが、1948年からワクチンが定期接種として導入されると、患者さんの数は急速に減少し、1999年を最後に以降の報告はありません。現在では世界的にも患者さんの数は減少しており、2017年にWHOに8819名の報告がされていますが、そのうちの6割をインドが占めていました。アジアやアフリカ、中南米では現在でも流行することがあり、注意が必要です。
地域ごとに推奨されている予防接種のスケジュールは異なりますが、日本では小児期に1期接種として4種混合ワクチンを4回、2期として2種混合ワクチンを1回接種します。時間が経過すると抗体価は徐々に下がっていくため、アメリカでは成人に対し、10年毎のブースター接種、妊婦さんへの接種、イギリスでは妊婦さんや海外渡航者への接種が推奨されています。注意が必要なのは、ワクチンによって得られる抗体はジフテリア菌が産生する毒素に対する抗体であり、ジフテリア菌に対する抗体ではないという点です。ジフテリアの発症は防ぐことができますが、保菌者にはなってしまいます。流行地域に渡航する際には十分に気をつけてください。
■ポリオ
ポリオウイルスに感染するとほとんどの場合、症状が出ないか、出ても鼻水や咳が出る位なのですが、1000~2000人に1人の割合で手足に麻痺が出てしまうことがあります。日本では30年ほど前からポリオ感染者は出ていませんが、世界ではまだポリオが流行している地域があります。世界との交流が盛んになっている昨今では大事な予防接種であると考えています。2012年までは生ワクチンが使用されていましたが、稀にワクチンウイルスによる麻痺が出現するお子さんがいたため、現在は不活化ワクチンが使用されています。
接種可能年齢
生後2か月以上7歳6か月未満
標準的な接種年齢
<初回免疫>生後2か月以上12か月未満
<追加免疫>初回免疫終了後、12か月~18か月の間
接種回数
20日から56日の間隔をおいて3回
初回接種(3回目)終了後、12か月から18か月の間隔をおいて1回
当院推奨の接種時期
1回目:2か月
2回目:3か月
3回目:4か月
4回目:1歳6か月
※当院の推奨時期ですので、詳しくは主治医の先生とご相談ください。